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ねじまき鳥クロニクルに出会った頃

Shinjuku

新宿駅の雑踏と色彩のない未来 彼女が読んでいたハードカバーの本は「ねじまき鳥クロニクル」というタイトルだった。 彼女が見つめるその分厚い本の中に一体どんな世界があるのか、その大人びた眼差しの先にある物語は僕にも手を伸ばせば届くのだろうか… 伸ばした手のひらにその世界は存在してくれるのだろうか… 電車を降りると紀伊國屋書店に向かっていた。 その日僕はねじまき鳥の鳴き声が聞こえる世界に足を踏み入れた。 […]

ドーナツの穴の向こうの景色と痛み

doughnut

新宿で見つけた夢と絶望と予感 あれは25年前、僕は小田急線沿いの小さなアパートに住んでいた。 職場が新宿だったので毎日電車で新宿駅まで通った。 そこでいつも同じ車両に乗る一人の女性を見つけた。 彼女は黒いリュックからハードカバーの本を取り出し熱心に読んでいる。 多分僕より年上で派手な感じでもなく、かといって地味な感じでもない。 新宿駅に着くといつものようにダンキンドーナツに立ち寄りコーヒーとドーナ […]